受講者アンケートより~2025春「読んで学ぶ文法&質問力」By 岩田 晶子 / 2025-08-28 2024年6月東ティモールにてディリ市内を案内してくれた若者とBaquitaさんとCarmenさん@Timorese Resistance Archive & Museum前(写真掲載許可済) この講座の特徴 「読んで学ぶ文法&質問力」講座は、新規講座として2025年4月~8月に実施しました。対象は「初級文法2」を修了し、基本的な文法の使い方は理解しているものの、文を組み立てる際に迷いが多く、完成までに時間がかかる方々です。この講座では、学んだ文法を単なる例文の暗記で終わらせるのではなく、短いストーリーの中でどのように使われるのかを読み取り、さらに自分が話したいことだけでなく疑問文も自由に作れるようになることを目指しました。会話の幅を広げることが目的です。教材はオリジナルで作成し、昨年訪問した東ティモール、ティモール島西部、フローレス島などの旅行記をインドネシア語で記して使用しました。受講者は4名で、Y.Y.さま(大学院生・20代)、K.I.さま(大学院生・20代)、50代女性の方、Rさま(50代)でした。 受講理由 受講理由としては、インドネシア語での会話が必要/会話力を向上させたいレベルに合っていると思った学習を継続するためといった声が挙がっていました。私自身いつも感じるのですが、初級文法を終えたあと、ある程度の文がすらすら読めるようになるまでには大きなギャップがあります。多くの方はその間に「旅行会話」や「日常会話」の講座に進まれますが、こうした講座だけでは、そのギャップを埋めきれません。文法の知識を実際の運用に結びつけるには、その間を橋渡しするためのステップがどうしても必要だと思います。多くのカリキュラムでは、この大事なステップが抜け落ちてしまっているように感じます。そうした意味で、「レベルに合っていると思った」という受講理由は、とても冷静で的確な判断だと感じました。 期待と満足度 ドキドキする質問ですが、受講者の皆さまからの回答は次のとおりでした。リスニング力/質問を作る力の向上 一定の成果あり、概ね満足会話のレパートリーを増やす/体験談を読むこと 大変満足インドネシア語で会話が成立する 期待度100に対して満足度70初級文法からのステップアップ さまざまなアプローチで充実した内容この回答をどう受け止めるかですが、教材づくりや進め方に私自身が課題を感じた部分はあります。オリジナルの読物教材は、文法・語彙、難易度、長さを検討しつつ、読み物からの学びとして、どこにポイントを置き、どの順序で積み重ねていくかを考えながら設計しました。物語の執筆に時間をかけましたが、それでもなお、質問力の向上までを範囲とする教材全体として十分に吟味できたかといえば、時間は足りませんでした。新しい挑戦なので、「走りながら形にしていく」ことで実現できればよいとも考えていました。旅行記を素材にしたストーリー仕立てのテキストで「文法を実際の運用につなげる」という試みは、その意味で大きな一歩であり、他ではなかなか味わえない学びを作れたのではないかと感じています。とはいえ、特に講座の前半部分では、盛りだくさんに感じられたかもしれません。これは次回への反省材料にします。 印象に残った点は、、、 自分の発想では出てこない質問や表現単なる知識習得ではない言葉を実際に使う場で学びが深まった写真付きの物語練習問題や物語の内容自分で考えて文を作ることいずれも、この講座で学んでほしかったことだったため、それが伝わっていたことを嬉しく思いました。 役立ったこと・興味深かったこと 会話の流れを意識した質問作りの練習相手の答えが広がるように工夫すること訪問先の自然や景観に関する記述meN-動詞、yangを用いた文など実際に使用できそうな文を学べたことさまざまな民族の文化や生活皆さま、ご意見ありがとうございました。質問作りと物語の両方を楽しんでいただけたようで安心しました。特に、Googleマップを見ながら読み進めていただけたのは嬉しいです。便利な時代ですね。 物語についての感想 物語を通じて学ぶという方法について、どのような感想を持ったのでしょうか?場面や背景をイメージしながら言葉を理解でき、記憶に残りやすい内容が豊かなので、事前準備が十分でないと難しい学んだ表現を定着させることができれば表現の幅が広がっただろう単語の使い方を状況毎に理解しやすい同じような状況であれば、その表現をまねることができるとてもいい、写真があったので想像しやすかった旅行記を読むのが楽しかった好意的なコメントが多いですね。具体的な記述が多く、今後の教材作りの参考になります。教材の舞台となった東ティモールは、国土は長野県ほどですが、海も内陸部も自然が豊かで、朝から晩まで、西から東までさまざまな表情を楽しめました。化石探しは楽しく、洞窟壁画も、古代人の営みにロマンがかきたてられました。私の知識不足や言葉の拙さは写真で補えたでしょうか。ディリに滞在中だった福井県大野市のKさま、東ティモールの若者3名(上記の写真)、案内をしていただきありがとうございました。また、ティモール島西部モロのアート・コレクティブlakoat.kujawasも紹介しました。以前、九州芸文館のHさま(当時)が企画されたトークイベントの通訳で関わり、とても興味深かったため、東ティモールから陸路で訪問しました。リーダーのディッキーや手作りパンをごちそうしてくださったFさんご夫妻に感謝申し上げます。初対面の方を含め多くの方に快く迎えていただき、さまざまなテーマで話すことができました。東ティモールでも、高校生にはテトゥン語に変えてからの方が理解が早かったのですが、一般にインドネシア語はしっかり伝わりました。忙しくてブログなどで紹介する時間が取れませんでしたが、この講座の教材として形になり、ひとまず完成できて良かったです。 質問作りについての感想 今回の教材としては、力を入れたり、少し比重を押さえたりしたのがこの部分になります。自分の関心と相手の関心をつなげる質問を考えるのは予想以上に難しいうまくいい質問ができると会話が自然に広がり、実践の手応えを感じて楽しい質問をするために物語を何度も読んだ答えを想像しながら質問を考えた反復練習するといいと思った質問作りまで取り組む余裕がなかった反復練習をすると良かった、復習にもう少し時間を取れたらよかった、質問作りまで取り組む余裕がなかったというのは、丁寧に取り組む姿勢があるからこそ感じられたことだと思います。eラーニングの良さのひとつは、それぞれのペースに合わせて学習できることだと考えています。負荷をかけるのもかけないのも自分の判断によるものですが、自分のペースで進められることがベストではないでしょうか?一番大切なことは継続だと思います。どのくらいできたか、はその次の問題です。ですから、「また余裕ができた時に取り組めればいい」としっかり割り切ってください。無理せず、自分に合うペースで続けましょう。 どんな人にお勧めですか? これは受講者に書いていただくのが一番ですね。文法や単語を学んだ人で、コミュニケーションの中でどう使うかを体験したい人会話を通じて相手と関係を築きたい人基本の語彙や文法を学習した人基礎文法が終わり、会話を楽しもうと思う人学習の目標やペースを調整できる人物語についてはポジティブな意見が多く出ていましたが、この回答に「物語を読みたい人」というのは皆無ですね。ちょっぴり残念。とはいえ、「基礎的な文法と語彙を習得した人(=言語知識がある人)」が、次の段階として、「会話を楽しみたい(=言語運用力を身につけたい)」場合にお勧め、というように読めました。これはこの講座の狙いに当たるので、それが伝わっていたことは嬉しいです。「会話」というのは、「使えるようになること」を意味していると理解しました。文法を学んだけれどなかなか話せるようにならない、というのはインドネシア語学習者が共通して感じている課題ではないでしょうか?そのために何をしたらいいかというと、簡単ではないので分量が多く感じられたかもしれませんが、今回の講座の方法はアプローチのひとつになっていると思います。もうひとつ、「学習の目標やペースを調整できる人」という回答がありますね。これも大事な意見です。eラーニングでは、ZOOMセッションなどがない場合は特にそう感じやすいと思いますが、ZOOMセッションがあっても、このように感じたということです。「ちゃんと覚えていない」と負担に感じてしまうタイプの方は余計にそうかもしれないですね。ZOOMセッションでみんなに会えるのが楽しみ、という目標の持ち方で良いと思います。まじめな方は、肩の力を抜いて参加してください。 受講前&受講後の変化 たった10回の講座を受講して、いったい何が変化するのでしょうか?この質問は、私にとっても刃が向いている質問だと思います。それぞれの講座に狙いはあるのですが、狙いが伝わるかどうかは、設計の仕方にもよると考えています。今回はどうだったのでしょうか。「相手にどう伝わるか」「会話をどう広げるか」という視点を持てるようになったため、学習を楽しみながら続けられるようになった表現を学ぶ際も相手とのやり取りを意識する姿勢が身についた単語は例文の中で覚える方が、使いたい時に出てきやすいことに気が付いた新しい取り組みだった言葉の選び方にも意識を向けようと思った本当にこの通りなら、嬉しいのひと言しかありません。実際にはどうであったとしても意識が変わったのであれば、その変化がどれほど小さくても、私はとても嬉しいです。 良い点&改善点 これは、字が小さめで恐縮ですが、入力コメントを直接読んでいただく方がいいですね。 まとめと秋期講座 いずれにしても、この講座を通して私自身も改めて学び直し、旅で出会った文化や人々を教材として共有できたことは、大きな喜びでした。後期も、同じタイトルの講座を開講予定です。今回は途中で分量が多いという意見がありましたので、全体的に組み直しをします。オリジナルの物語はほぼそのままで、音声教材は作る予定です。今回のコメントを参考に受講される方がいらっしゃるかもしれません。感じ方はそれぞれですので、ご自身でご判断ください。迷う方はこちらから事前にご相談ください。海外や地方に行くので参加できないかもという心配をされている方も、ご安心ください。インドネシアや他の国から接続して参加している方がいらっしゃいます。後期は9月末か10月頭から年明けの2月までを予定しています。 皆さま、お忙しい中アンケートにご協力いただき、ありがとうございました。