いいマイクについて
この記事については、実は1か月くらい前にほぼ書き終えていたのですが、分かりやすい図を掲載しようと思い立ったのが間違いでした。図が思うように仕上がらず、作りかけの状態で作業が止まってしまい、この記事も掲載できずに放置されていました。そのため、分かりやすい図を作成することは断念します。
リモート通訳にBlue社のYetiというマイクをお勧めする理由
「インドネシア語通訳者のお仕事事情その2」で、リモート通訳をするうえで私が愛用しているマイクについて少し書きました。ここ数年で購入したもののうち、満足度100%以上の商品です。
自宅リモート通訳、出先リモート通訳のいずれの場合でも、Blue社のYetiというマイク1台で、リモート通訳が必要となる複数のシチュエーションに対応することができるため、このマイクは特にお勧めです。
複数のシチュエーションというのは、通訳をする際に、①通訳者の音声を流す、②リモートでつながっている発表者の音声を流す、③同室にいる発表者の音声を流すなどです。通常はリモート通訳では、通訳者として自分の音声が流れれば十分です。ですから、そのような通常の状況のリモート通訳しかないという方には、通常のマイクで十分です。
まず、Yetiのメリット・デメリットをまとめます。
メリット | ①音質がいい |
②リモート通訳で複数のシチュエーションに対応可能 | |
③持ち運びが可能 | |
デメリット | ①かさばる、やや重い |
②やや高価 | |
③そろそろ新しい機種が出てくるかも |
この記事では、1)なぜ私がYetiを購入したのか、2)リモート通訳でのYeti活用術の2点についてまとめます。
1)なぜYetiを購入したのか
Yetiの活用方法を先に知りたい方は、ここを飛ばして「2)Yeti活用術」に進んでください。
Yetiを購入したのは2018年でした。現在ではYetiはリモート通訳にも大活躍していますが、当時はリモート通訳をすることになるとはまだ考えていませんでした。2019年には今後リモート通訳の時代に突入すると感じていましたが、インドネシア語における需要はまだまだだと考えていました。
それでは何のために購入したかというと、音声録音のためでした。それまで使用していた音声録音の機材では不具合がでてきたからでした。
2002年から赴任前の方々を中心にインドネシア語を教えていますが、インドネシア語は他の言語と比べると音声教材が少ないため、なかなか単語を覚えられないという声がありました。そこで、単語学習に最適なアプリを活用し、覚えてほしい単語の音声を自分で録音することにしました。
当時の内蔵マイクはノイズが耳障りだったため、いろいろ調べ、マイクと口元の距離が一定になるヘッドマイクがよいと考え、Shure SM10Aというヘッドマイクを購入しました。ShureのSM10AはXLR端子で、当時、Blue社のicecleという製品を使えばUSBでパソコンにつないで録音することができました。そのような製品の選択肢はそれほどなかったように記憶しています。
そのような理由で、2013年末にicecleを購入しました。
パソコン内蔵マイクと比較すると音が良くなったと受講者にも好評で、喜んで使用していました。しかし、数年すると、ノイズが気になるようになりました。部屋のエアコンなどの音を拾っていたのかもしれませんし、ケーブルが細いのでケーブルの接触不良などの問題だったのかもしれません。
原因はよくわかりませんでしたが、購入してから数年が経過していたので、新たな機材が必要だと考えました。
そこで、いろいろと調べた結果、同じくBlue社のYetiを購入することにしました。YetiにはYeti ProとスタンダードのYetiがありました。歌声を録音するのであればXLR端子があるYeti Pro一択だったのかもしれませんが、予算と使用状況を考えて、パソコンにUSBで接続するだけで簡易な宅録環境が整うと評判のYetiがベストだと判断しました。
音声については、ダイナミックマイクのShure SM10Aと異なり、Yetiはコンデンサーマイクです。私にはそれがプラスなのかマイナスなのか分かりませんでしたが、you tubeなどにアップされている音声を聞き比べ、購入を決めました。
そのようにして2018年にYetiを1万6千円で購入しました。
パソコンにつないですぐに使うことができ、音質も良く、受講者からの評判も良かったので満足していました。
アームを購入
実はYetiはやや場所をとります。当時は、1週間に1回ほど録音する程度でしたので、使う時だけ机の上に置いていました。そのうち、教える講座が増え、録音頻度が増えました。そこでアームに吊り下げることにしました。(RODE PSA1 スタジオ用マイクブームPSA1。当時、12,000円程度。)
アームにも様々な種類があり迷いましたが、英語のyou tube動画やブログ記事などから情報収集しました。Yetiは米国の会社の製品ですから、日本語ではなかなか記事がなかった当時でも、英語の記事で簡単に情報収集をすることができました。
その後、教室を借りて開催していたインドネシア語講座が新型コロナウィルスの影響で会場を使えなくなったため、2020年3月にはオンライン講座を開始しました。その際には、これまでの設定を何も変えることなく、Yetiを使い続けることができました。
受講者にも確認しましたが、Yetiの音声はいつでもクリアで聴きやすいとのことでした。ちなみにShureと聴き比べてもらいましたが、ShureのSM10Aも聴きやすいと言われました。ただ、SM10Aはヘッドマイクです。頭にヘッドセットを付けているよりも何もない方がストレスがないと感じ、Yetiを使用し続けています。
ヘッドセット型マイク
Yetiからは少し話が逸れますが、その後購入した他のマイクについても記載します。
その後、リモート通訳で同時通訳をするのであれば、マイクとヘッドホンが一体型になっているヘッドセットが必要だと考え、英語通訳者の先輩にも相談し、USB接続できるSennheiserのヘッドセットを購入しました(ゼンハイザーSC60 USB ML)。これは、ヘッドセットにもミュートボタンがついています。
現在は7,000円台で購入できるようですが、私が購入した時は9,000円台でした。手ごろな価格帯で必要な機能を満たしています。
マイク位置を自在に調整することができるShure SM10Aと異なり、このヘッドセットのマイク位置は、上下で調整することしかできません。テレオペレーターやナレーションであれば、落ち着いたトーンで話すのでこのヘッドセットで問題ないと思います。
一方、インドネシア語は日本語よりも破裂音があります。また、通訳をしている時には勢い余ってしまうこともあり、拾わなくていい音も拾うのではないかと心配になりました。聴いている方には「クリアに聴こえる」と言われますが、破裂音などを拾う気がするので、自宅ではもっぱらYetiに頼っています。
出先リモート通訳の際に、音響エンジニアの方がスタンバイされている機会がありました。その方から、骨振動AfterShokzのAeropexをお勧めされました。側圧がそれほど強くないので、頭が大きめの人でも頭が痛くなることを気にせず使える、との話でした。
英語通訳者の方で、頭が痛くなるので側圧が強くなく、耳をふさがないタイプのヘッドセットを探している方がいらっしゃったのでその話を伝えたところ、早速購入されました。その方のお話では、音楽と異なるからなのか、音声が振動で伝わるとくすぐったく、通訳するには向いていないと感じられたそうです。
印象については個人差もあると思いますが、今後ヘッドホン・イヤホンはまだまだ進化する可能性があると思いますので、もう少しあれこれ試してみたいと思います。また、音声機材に限りませんが、機材は価格は上を見たらきりがなく、それぞれに落としどころを見つけることも重要だと思います。
2)Yeti活用術
Yetiのおすすめポイントは、人の声をきれいにとるだけでなく、単一指向モード、双指向性モード、ステレオ・モード、無指向性モードの4種類に指向性を切り替えられることです。複数の楽器録音をすることなどにも優れていますが、通訳以外の使用法についてはここでは触れないことにします。
ここでは、リモート通訳として私が使って便利だと思った3つの使い方をお話します。
現在は、単一指向性と、双指向性のふたつの指向性で用いています。
1.一つ目の使い方:単一指向モード
通常は単一指向モードで次のように使っています。
①音声録音:単語の発音、動画の音声等を録音する
②オンライン講座で外部マイクとして使用する
③自宅リモート通訳で外部マイクとして使用する
単一指向性は、ポッドキャストやボイスオーバー、そして、パソコンによる音声通話、オンライン講座、オンラインミーティング、リモート通訳などで、音声をよりクリアに伝えたいと考えている方にお勧めです。マイクロフォンの正面の音を収録しします。 これまで、単語用の音声録音、動画講義用の音声収録、オンライン講座、リモート通訳などで使用してきました。
2.二つ目の使い方:双指向性モード【出先編】
私がYetiをリモート通訳の特定のシチュエーションでお勧めするのは、双指向性モード、つまり、マイクの前後2方向の音源を捉えるモードです。対面式インタビューなどに最適な収録方法というとイメージしやすいと思います。これが、
①出先リモート通訳
②自宅リモート通訳
のいずれについてもお勧めでした。
まずは、出先で使用する場合からお伝えします。
講師(発表者)とオーディエンスが別の場所にいる場合です。感染対策として、同じ建物の別の部屋にいる場合と、そもそも全く異なる地点にいる場合のいずれらのケースもありました。この時に、講師と同じ部屋にいたほうが通訳がしやすいだろうとの判断で、私は講師の方と同じ部屋で通訳をしたことがありました。
講師と異なる場所で通訳をすることは可能ですが、同じ空間に講師がいるほうがさまざまな情報が入り、通訳はしやすいものです。ところが、講師との距離が近いとハウリングが生じやすくなります。また、コンピューターの個性なのか、それぞれのコンピューターでボリュームの調整をしたにもかかわらず、講師の声は明瞭に聞こえても、通訳の声が聞こえにくい、という状況になったこともありました。
そのような時に、このような斜向かいの位置に講師(発表者)と通訳者が座り、その中間にYetiをおき、「双方向」を選択すると、私の声だけでなく向かい側にいる講師の声もきれいに拾います。
マイクはひとつなのでハウリングは起きませんし、先ほどの講師と通訳者でボリュームのバランスが悪くなるという問題も生じません。
Yetiはやや重く、かさばり、荷物にはなりますが、出先でリモート通訳をする場合には持っていくことが多いです(東京や横浜でのリモート通訳の際も持っていきました)。
同時通訳をする際は、リモート通訳でなければエンジニアの方がいるので、私たち通訳者は知識がなくても業務を遂行することができるのですが、リモート通訳ではエンジニアがいないことが多いので、自分で何とかできる方が安心材料が増えます。
そのような状況を考慮すると、上記の写真でお見せした使い方は私の中では「最強」で、仕事もスムーズに進みました。
3.三つ目の使い方:双指向性モード【自宅編】
ところが、もう一つ最強の使い方が出てきました。この説明をするために図を作成していたのですが、なかなか思うようなものが完成しないので、想像しにくいかもしれませんが文字だけを頼りに理解してください。
あるリモート通訳で、自宅にいる私、主催者、日本各地のオーディエンスとインドネシアの複数個所を結んでトークイベントを行いました。インドネシア側の発表者との接続で往々にして問題になるのがWiFi環境です。
インドネシアではLANで接続していることは少ないため、インドネシア側発表者の環境で何かが起こると、音声が乱れたり、例えばZOOMで接続しても、発表者のZOOMが落ちてしまうことがあります。大雨の最中などにはWiFiの接続が悪くなる、という話も聞きます。
イベントを中止するわけにはいかないため、バックアップとして別の手段で接続する必要があります。LINEやWhatsappなどで接続する方法もありますが、Google Meetで接続するという方法で行ったことがあります。
そうすると、インドネシア側発表者のZOOMが落ちてしまった場合でも、事前に発表者と主催者と私がGoogle Meetでつながっていると、Yetiを双方向モードに変えれば、Google Meet経由で私のスピーカーから聞こえる発表者の声をYetiが拾い、そのまま私のコンピューターを経由し、ZOOMで他のオーディエンスに伝えることができます。これはYetiがあって助かった事例でした。
こうしたことから、リモート通訳をする人すべてにお勧めというわけではないのですが、私のリモート通訳環境においてYetiは最強のパートナーであると認識しています。
というわけで、今日はリモート通訳に最強の友であるYetiの紹介でした。