受講者アンケートより~2024秋「通訳基礎1」

2024秋「通訳基礎1」の特徴

「通訳基礎1」の秋期講座は、2024年9月~2025年2月に実施しました。

受講者は、フリーランス通訳者のAさま(40代)とBさま(40代女性)、そしてH.A.さま(20代女性)の3名でした。

1名が新規受講者、2名が継続受講者でした。

講座への期待

受講に際し、「何を学び、何ができるようになりたかったのか」を質問しました。

受講者の学習歴やバックグラウンドのほか、学ぶ目的もそれぞれですので、期待している内容も異なります。

今回は、「通訳力向上のための語彙力強化」、「通訳能力の底上げ」、「独学に限界を感じていたので通訳のプロから学び、アドバイスを受けたい」という回答がありました。

インドネシア語学習者、日/尼通訳者に関係なく、「岩田のインドネシア語講座」の受講者の多くは「独学に限界を感じる」ことを受講理由として挙げています。

希望するレベルでインドネシア語を学べる場が、それほど少ないということだと思います。

受講して変化したこと

この講座では、受講者の皆さんが「新たな気づき」を得られるように内容を組んでいます。通訳のスキルアップには継続が不可欠ですが、10回の講座を通じて「確かな手ごたえ」を感じていただけるように心がけています。

アンケートには、このような変化があったとの声がありました。

  • 語彙増強
  • 目指すべき通訳の形がより明確になった
  • 聞き手のために情報を整理することを意識できるようになった

こうした変化は、受講者の皆さんの目的意識が明確だったからだと考えています。

日本語原文の意図の理解

言語能力以外に通訳者に必要なスキルは何でしょうか?そういうと、一般に次の3つが必要だといわれると思います。

  • メモ取り(ノート・テイキング)技術
  • 専門用語の体系的理解
  • リテンション能力

一方で、ベテランの通訳者はなによりも「体力」と「メンタル」の重要性を強調します。一般の人が想像する以上にその2つが重要だという意見に私も賛成します。さらに現場で実感するのは、原文の意図をできる限り正確に汲み取る能力だと思います。言語を問わず、話者の真意を文化背景を含めて適切に解釈できるか否かということも、通訳の成否を決める一因になります。

「善処します」、「検討します」などの定型表現は分かりやすい一例ですが、それ以外にも、推敲を重ねたり、多くの関係者が確認した公式文書や公式的意味合いの強い文章を読み上げている場合と即興の話では、通訳者が頭の中で行う、話者の「真意」の分析方法が異なります。

日本語ネイティブであっても、日本人の発話の意図を正しく把握できるとは限りません。時には聞こえてきた話の真意を見落とし、字面のみをインドネシア語に変換してしまうことがあります。

通訳をしつつ、真意の理解が正しいか、自らを俯瞰できるようになってほしいと考え、ある課題を出していました。

回答は以下の通りでした。得手不得手だけでなく、分野や内容によって異なる場合もありますので、それぞれへのコメントは控えます。少なくとも、この重要性については理解していただいていると感じました。

通訳の速度と正確性のバランス

通訳能力を測る際、通訳速度もその指標のひとつになります。しかし、訳出が速くても正確でなければ意味がありません。

言語運用能力なども関係しますが、通訳者にとって、一般に速さと正確性はトレードオフの関係になると思います。

「遅いけれど正確に訳出する人にはスピードアップを」、「速いけれど正確性が十分でない人には正確さを」というように、私が求めるものは受講者によって異なります。

ここでは、速さと正確性のバランスについて、それぞれがこの10回で感じた変化を書いていただきました。

新たな判断基準

変化球の質問を作ってみました。新規受講者は今回の講座で、継続受講者はこれまで受講した「通訳基礎1」を通じて、通訳時に意識するようになった新たな判断基準を問いました。

少し分かりにくい質問だったかもしれませんが、これまでにも、このような内容を質問していたつもりです。今回は質問の仕方を変えてみました。

講座内で少し詳しく話をする時間をとることができれば、と考えています。

 

向上を実感したこと(その他)

向上を実感したことに関する任意回答です。

「長い道のりになる」のはその通りですね。通訳者になっても勉強に終わりはないですからね。受講者の通訳力が向上していることが分かるので私も喜びを感じますし、私自身も受講者に恵まれ、こうして講座を継続できていることに感謝しております。

通訳に限らず、「得意不得意を認識する」ことは役に立つものではないでしょうか。すべてが得意ということも、すべてが苦手ということもないものだと思います。気持ちや時間に余裕がある時、あるいはそのような依頼があった時に、普段はやらないやり方や分野に挑戦するなどメリハリをつけて勉強するのが飽きずに勉強を続けるコツかもしれません。

講師によるフィードバック

フィードバックにはとても気を遣います。その場で通訳のフィードバックをすると言葉足らずになりがちのため、もう少し分かりやすく伝えることができたら、と思うこともあります。

できるだけ具体的にフィードバックできるように努めておりますので、下記のように受け止めていただいたことは、大変嬉しかったです。

また、定着を図るためには、実際に使ってみることが最も近道になります。失敗しないようにというような「できばえ」を気にするより、ここだ!と思ったところで気になる単語を実際に使うようにしてください。

独学で通訳力を向上させるよりも、緊張感がある場で使うことで、より自然に場数を踏むことができると思います。

最後の質問

通訳現場で活かせたことについては、単語の例が挙がりました。講座では単語一覧を作成しており、その単語が通訳現場でよく出てくる、よく使える、という声をいただきます。

また、インドネシア語検定の話が出てきたので、少し補足します。今回のメンバーは2人がA級、1名がB級合格者で、前者2名は特A級を、後者1名はA級を受験しています。「岩田のインドネシア語講座」はインドネシア語技能検定試験の対策講座ではありませんが、結果的に講座内容が対策として役に立ったのであれば光栄です。

そして、一番大きな学びや、他では得られないことについては、皆さまからご意見をいただき、ありがたく受け止めております。実は、受講者の皆さまが切磋琢磨する姿に、私が一番刺激を受けていると伝えさせてください。皆さまの真剣な取り組みを間近で拝見できるのは大変贅沢な時間です。

これからもよろしくお願いいたします。

2025年春期講座

2025年春期「通訳基礎1」は、4月から8月まで隔週日曜日に予定しております。時間帯は未定です。気になる方はメールでこちらにご連絡ください。

オンラインでの実施という点で不安に感じられている方も、お気軽にご相談ください。

2025年春期は「通訳基礎2」を開講する予定です。「通訳基礎2」の受講は「通訳基礎1」を受講した方で、そのレベルに達したと私が判断した方に限らせていただいております。

本ブログを読まれた方が参加したい場合は、「通訳基礎1」から受講していただくことになります。ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

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