「ちょっとした文章を読めるようになったら楽しいだろうと思うのに、知らない単語ばかりで、文が複雑になるとどれが何にかかっているのか分からなくなって挫折してしまいます」
「なんとなくは分かるんですけれど、自分の理解のどこがあっていて、どこが間違っているのかが分かりません」
こんな声を聴くことがあります。今日は、読解講座でやっている内容についてお話します。
こんなことを教えてほしい
ひと通りの文法を学んだ頃に、インドネシア語学習者が直面することについて考えてみます。ひと通りというのは大雑把ないい方ですが、目安としてはmeN-kan, meN-i動詞、受動や接続詞や命令文などを学んだ程度を指すことにします。
その程度の文法の知識があり、辞書で調べるなどして単語の意味が分かれば、簡単な新聞記事を大体読めるようになります。大体読めると分かった気になってしまうのですが、実際に理解できているかというと、そういうわけではありません。
あるテーマについて背景知識があり、構造がシンプルで明快な文章であれば、難しい単語が使われていても理解することができます。ところが、簡単そうに見える文章であっても、構造がやや複雑な文章や、知っている言葉でも知らない意味で使われていると、細かいニュアンスまで理解することができません。
そのため、このように感じる学習者もいらっしゃるのではないでしょうか。
「ちょっとした文章を読めるようになったら楽しいだろうと思うのに、知らない単語ばかりで、文が複雑になるとどれが何にかかっているのか分からなくなって挫折してしまいます。」
「なんとなくは分かるんです。でも、自分の理解のどこがあっていて、どこが間違っているのかが分かりません」
これが英語であれば、レベルに応じた長文読解の問題集などの教材が市販されており、解説もついているので、独学でも自分のペースで学び続けることができます。ところが、インドネシア語にはレベルに応じた読解用の教材がそれほどありません。
そうすると、手に入る読み物をひとりで読むことになりますが、読み続けるには根気がいります。
だからこそ、「分からないところを質問したら解説してもらえるような場がほしい」と私自身が何年も思っていました。
現在は、私が学んでいた頃と比べると学ぶ場は増えていますが、それでも、私がここに書いたような事柄を学べる場は少ないのではないでしょうか。
読解力をつけるためのモティベーション
インドネシア語は、学び始めの段階では、学べば学ぶほど前には分からなかったことが分かるようになり、楽しく学べます。
ところが、meN-動詞を学ぶあたりから文法の説明が細かくなるため、学習者にとっては、インドネシア語を学ぶ楽しさを感じにくくなるように感じています。
文法事項を覚えるという方法ではなく、まとまった文章を読むことで学ぶ楽しさを味わおうと思っても、先ほどのように、自分にとって適切なレベルの文章を手に入れることが難しく、自分では自分の理解が正しいのかどうかが判断できないため、読むモティベーションを保つことが難しくなります。読解力が身につけば、ひとりでも読み進めていくことができるのですが、そこまでの力をつけることが想像以上に難しいのです。
せっかく興味をもって学び始めた言語ですから、できればこれからも楽しんでインドネシア語を学習してもらいたいと考えています。
ですから、この読解講座では、「このような文章が前よりも楽に読めるようになった」と感じてもらうことを目標に、腰を据え、地道に力をつけることができるようにしています。ひとりではなく仲間がいること、質問したら解説してもらえることがモティベーションを保つ秘訣です。
講座の流れ
予習:
事前にインドネシア語のマテリアルを課題にします。このマテリアルは新聞記事レベルですが、時事問題ではなく一般的な内容です。時事問題を読む際には、読解力以外の知識、つまり、その問題に関わる背景知識が求められます。そのため、背景知識がなくても読むことができるテーマを扱っていますが、新聞記事レベルですので、慣れるまでは少し大変です。
受講者は、事前に単語を調べ、自分なりに訳します。翻訳の練習ではないため、日本語として不自然であっても、あるいは訳せない個所があっても構いません。自分が理解したことを日本語で表現します。
当日:
マテリアルを音読します。正しく発音できていない音について、丁寧に指導します。そして、内容について各自の理解を発表してもらいます。複雑で分かりにくい文章、特別な表現、理解が不適切な場合は、その都度丁寧に解説します。
そうした形で最後まで進めます。
効率よく復習をするために、今の段階で覚えた方が良い単語、今は覚えなくても良い単語も伝えます。
講座のポイント
この講座で意識していることは、2つあります。
ひとつは、文法をひと通り学んだ人が、「どういう時にmeN-kan動詞を使うのか」、「どういう時に受動にするのか」という視点で考えるのではなく、「こういうことを表現するときに、こういう文法項目が使われていた」と意識して読む機会を増やすことです。基本的なルールが分かった後は、今度は実際に使われている事例を見ましょう、という考えです。
もうひとつは、新聞記事レベルの文章を読む際に、頻繁に用いられる動詞を見慣れてもらうことです。初級レベルの単語を習得した学習者にとって、その次のレベルの単語を覚えるのは簡単ではありません。単語帳を使って、中級レベルの単語を覚えるという方法ではなく、文章を多く読んで、見慣れることが近道だと考えています。